令和六年五月「生命の言葉」

世界にまるで不用の物なし

南方熊楠 (みなかた くまぐす)

南方熊楠

明治から昭和期の博物学者、生物学者、民俗学者。米国、英国等へ留学し、様々な言語の文献を用いて国内外で多くの論文を発表した。特に粘菌(ねんきん)などの微生物の研究は世界的に知られる。また、民俗学の分野では柳田國男と並ぶ重要な役割を果たした。生涯、在野の学者に徹し、地域の森林生態の保護にも力を注いだ。

神道知識の誘(いざな)ひ

「菖蒲(しょうぶ)に託す思い」
五月五日の端午の節句は菖蒲を使って行事をするため、別名「菖蒲の節句」といいます。菖蒲の葉は香りが強く薬草としての働きや葉の形が剣に似ているため、古くから中国では災いや病気をもたらす邪悪なものを祓う力があるとされてきました。
日本の古典にも菖蒲を軒や門に連ねて刺し置く「軒菖蒲」の風習が多く登場します。清少納言の『枕草子』や西行の『山家集』には、五月の季節感を美的に象徴する行事として描写されています。『枕草子』には檜皮(ひわだ)ぶき屋根の濃い茶色と菖蒲のみずみずしい緑色とのコントラストがとても魅力的だと評されています。
「菖蒲の刀」「菖蒲枕」「菖蒲酒」など菖蒲を使った風習は、すべて穢(けが)れを祓い清めるために行われていました。
「菖蒲湯」に浸かって健康や無病息災を祈り、菖蒲を頭に巻く「菖蒲の鉢巻き」は賢くて強い子になるおまじない。菖蒲を軒先に下げたり、屋根の上に投げたりすると厄除けになり火事にならないなど、現代においても親しまれています。

今月の祝日

憲法記念日(三日) 昭和二十二年の日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する日。
みどりの日(四日) 自然に親しむとともに、その恩恵に感謝し豊かな心をはぐくむ日。
こどもの日(五日) 子どもの人格を重んじ、子どもの幸福をはかるとともに、父母に感謝する日。