私たちが住んでいるのは大地の上であり、その大地は万物を育み命の糧をいただく大切なところです。
その大地を人間が使わせていただくのですから、建物を建てたり土木工事を行うにあたり、その大地をお守りいただいている神様をお迎えし、神々の恵みに感謝し、土地の平安と工事の安全を祈念する祭儀を「地鎮祭」といいます。

地鎮祭は「とこしずめのみまつり」と読みますが、普通は「ぢちんさい」「ちぢんさい」と読んでいます。また、地祭「ぢまつり」ともいいます。

約1300年前の持統天皇の時代に地鎮祭が行われた記録があり、大変古くから行われていた儀式です。
昔は、地鎮祭などのお祭りを行う事は、一家にとって大変名誉なことであり、晴れの着物を着飾り、神前には自分の田畑で穫れた作物を神饌(お供物)として捧げ、直会(祭典終了後に神様に供えた神饌のおさがりを戴く儀式)には親戚や近所の人を招待してお祝いしたものです。

【建築主】
建主は地鎮祭を執行する主役です。
ですから、神様にお供えする神饌(お供物)を用意するのが慣わしです。
穿初の儀(忌砂に鍬を入れる)を行い、工事の始めを神前に報告します。
玉串を神前に奉り、土地の平安・工事の安全・無事の竣工・家門の隆昌を祈念します。

【設計者】
苅初の儀(忌砂のところで、鎌で草を刈る所作)を行い匠の技を奉納します。
玉串を神前に奉り、設計図を報告し、設計と工事の食い違いがないように祈念します。

【施工者】
施工者は建主の依頼により建物を実際に建てるのですから、建主に代わって竹を立てたり祭場の補設をします。
穿初の儀(忌砂に鋤を入れる)を行い、大匠としての伝統建築工法の技を奉納します。
玉串を神前に奉り、設計図に基づき技術の粋を集め、工事の安全・工事に携わる人々に怪我や病気が無いように祈念します。

【準備品】
一般的な地鎮祭での準備品です。

  • 神饌(お供え物)
  • 紙コップ(直会で御神酒を戴くため)
  • 竹(3m位の葉のついた竹4本。土地の中央に約2~3m間隔で四角に立てる。杭などがあると便利。)
  • 注連縄(注連縄として竹に張り巡らす。こまい縄、荒縄などを利用)
  • 鎌・鍬・鋤・砂(鍬入れの時に使用。スコップでも代用可。)
  • 祭壇・三方・紙垂・榊(神籬・玉串)、また鎮物は当神社で用意します。

※本来、これらの物は祈願主である建主さんが全て用意し設営するものでした。しかし最近ではそれぞれが持ち寄り設営します。詳細は神社や施工業者にご相談下さい。

【設営】
祭場は、一般的に土地の中央を使用し、清浄な場所を示すための斎竹(いみだけ:葉の付いた青竹)を四隅に立て、注連縄(しめなわ)を張り、祭壇を設けます。
清浄な場所ですので草を刈ったり、地面を平らに均します。
斎竹として竹を2~3m程度の間隔で四角に立てます。(杭などを利用すると便利)
注連縄として縄を北東の角より時計回りに張り巡らし、紙垂をさげます。(高さは1.8m程)
斎砂として砂を東南の角に山にします。
その中央に祭壇を設け、神籬(ひもろぎ:榊に麻と紙垂をつけたもの)を立て、神さまの依代(よりしろ:神さまの降りられる所)とし、神饌を供えます。

【式次第】

手水下位の者から手水を使い、手を洗い、口をすすぎ、清める。 
参進下位の者から順次着席し、最後に建主・斎主が入場する。 
修祓祭儀を始めるにあたり、神饌・玉串・参列者を祓い清める。起立・低頭
降神その土地をお守りいただいている氏神・産土大神・大地主神をお迎えする。起立・低頭
献饌ご神前に神饌をお供えする。 
祝詞奏上神さまに、この敷地の平安・工事の安全・無事の竣工を祈念申し上げる。起立・低頭
散供
(四方祓)
その敷地を祝福し永久に災いが無いように、切麻(半紙・麻・米など)で敷地の四隅と中央を清める。 
苅初

 

穿初
(鍬入れ)

設計者・苅初の儀を行い匠の技を奉納します。
(忌砂のところで、鎌で草を刈る所作)
建 主・穿初の儀を行い、工事の始めを神前に報告、奉納します。
(忌砂に鍬を入れる)
施工者・穿初の(鍬入れ)儀を行い、大匠としての伝統建築工法の技を奉納します。
(忌砂に鋤を入れる)
 
玉串奉奠参列者が玉串をご神前に奉り、土地の平安・工事の安全・無事の竣工・家門の隆昌を祈念し拝礼する。 
撤饌お供えした神饌を、お下げする。 
昇神神さまにお帰りいただく。起立・低頭
直会神酒拝戴。祭儀の終了にあたり、ご神前にお供えした御神酒を頂戴する。 
退下最初に斎主が退出し、建主・参列者と上位の者から退出する。 
 祭儀が滞り無く全て終了して後、建主・設計者・施工者の代表は、ご神前にお供えした米・酒・塩で四隅を散供して祓い清める。